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2019年11月7日木曜日

潜入「スピリチュアル集会」<前編>


知りたかった。
“教祖様”が実際に何を仰っているのか。
なんでそんなに自信満々でいられるのか。

これまでずっとネット上の怪しいスピリチュアルや信者ビジネスを観察してきたが、冷ややかに見ていたのもあって、「その空間」のことまでは分からなかった。

その場所において何かに心酔する人たちがどんな様子か気になる。
私みたいに疑り深い人間とは正反対の、純粋かつ妄信的な人たち。
そんな“信者”に持ち上げられて、“教祖様”はどんどん増長する。

ネット上の声だけにとどまらず、セミナーなどに参加した人が面と向かって
「おかげで楽になれたんですう(頬をつたう涙)」
なんて感激しているのを見ると、意図的にそう仕向けていたとしても、そりゃあ教祖様の勘違いも自信もさらに膨らむだろう。

だから現場の雰囲気はぜひ実際に味わいたかった。

「スピリチュアル女子を笑うな」みたいな記事を読んだことがあったが、現場の温度を体感すれば「いや、やっぱ笑うしかないやろ」と言えるかもしれない。

スピ自体を笑い物にすることはない。
ただし、スピを都合よく使った高額商売などは肯定すべきではないし、失礼ながら荒唐無稽な馬鹿なことを世間に広めようとする連中にはしっかりとツッコむ必要があると思う。

それが時に楽しんでいる人を貶(けな)すことにはなってしまうが、馬鹿にハマりきって地獄を見ることや、その人の家族や友人まで傷付くことは未然に防げるかもしれない。

もちろん、現場に突入した私がその世界に目覚め、「素晴らしい……。私は間違っていた……」と、とめどなく涙でも流すのなら話は別だ。
それが絶対に無いとは言えまいよ。

というわけで、何はともあれ今回はせっかくの機会なので「潜入」してきた。
11月3日(日)に都内でおこなわれた「龍の日」なるイベントだ。




チケットを買うってのがまた…


玉石混交のスピリチュアル勢がまるで競うように参加する「癒しフェア」でおなじみの会社が主催。ネット上で告知が始まった段階から細かくチェックはしていたが、当初の出演予定者は4人だけだった。

心屋仁之助氏(出た出た、これ目当て)
デューク更家氏(あらあらまあまあ)
龍使いSHINGO(誰や)
ドクタードルフィン(だから誰やって)

これでチケットの売れ行きがいまひとつだったのか、出演オファーの返答が遅かったのかは定かではないが、本番まで一カ月を切った段階でタレントの楽しんごさん、アニソン歌手、元経営者の方やら、「龍」と何の関係があるのか説明すらされない出演者が次から次へと告知されていった。
10日前に会場のバイト募集(時給千円)があったりして。

入場には出演者のステージごとにチケットが必要とのこと。
そこに料金差もある。まあ商売がお上手。
全部見たら軽く4万円は消し飛ぶじゃないか。

まずは、この手のチケットをネットで取る際の「何やってるんだろ」っていう感覚が実にプライスレスだった。
いや嘘。けっこうプライスもバイアスもかかっている。

当日券はあると思うが、万が一それが売り切れで会場に入れなかったら「こんなのに満員かよ」って思った時の無力感がいよいよ半端ない。
「ああ入りたかった。…ん? 入りたかったか??」って混乱もしそう。
意を決して買うのはオープニング、心屋&デューク対談、心屋単独トークの3ステージ。

計7千円。

うーむ、ななせんえんなあ…。
実際のところ生活水準からいったら大した額ではない。
でも、このお金で家族楽しくロイヤルホストやらステーキガストに行けるのに。
5歳の娘が欲しがっていた「キュアミルキー」のコスチュームも買ってあげられるのに。

こんなネットでセミナー的イベントの購入ボタンなんかをよく押せるよな……
やっぱり私とは別の世界の人達なんだな……
と、信者を一瞬だけ尊敬しかけたりする。

これは潜入のため…… 潜入のため。
そう、潜入するんだ私は。
ああTwitterのフォロワーさん達よ……なぜかいつまでもフォローバックしてくれないけどいつも見てくれている有り難い人達よ……
私の中指にいま一瞬の力を……

「購入完了」 はい、もう戻れない。

『アンチ乙ぅー 嫌なもの見るのに金払ってエネルギー使ってぇー』

心屋Facebookにいつもコメントしている認定講師とかの連中のとても気持ちのいいお顔なんか思い浮かべちゃって。
はいはい、もう好きなだけ罵ってくれ。

でも、この私の7千円で心屋のおっさんが10回ぐらいスタバ行けるわけよ。
いつもなら不快にしか思えないあの店内での自撮り画像の投稿も「お、きょうもフラペっとるね。いいよいいよ、好きなだけコーヒー豆と経済を回してくれい」って気持ちに
 
え、なれない? 地獄かよ…。

それでなくても、せっかくの日曜日の午前10時から開演なんですわ。
朝から出ていく私の背中に家族の目が冷たいこと。
私、まだ洗脳されてもいないのに……。


見つかったら殺される可能性


色々言っているけど、とりあえず心屋氏のステージは絶対に一回は雰囲気を味わってやろうとずっと思っていた。

ブログや書籍やSNSやネットラジオで

「娘さんたたかれるために生まれた」
「(流産は)自分で選んだ」
「人に迷惑をかけよう」

なんて世間一般からしたら胸クソ悪いことをポンポン言う人というのは事実。
「オープンカウンセリング」なる動画の様子もあまりに酷かった。
なので、今回もどんなエグいステージなのかと。

本当にそんな人が大勢に支持されているのかと。
少し期待していたが、実は怖くもある。

ほら、私って心屋氏に見つかったらぶち殺されちゃう可能性あるやん?






おお、こわー…… 絵文字がまたこわー……。

彼の思想や手法に批判的なだけで、ひどく叩いているわけではないといくら言ったところで、そんなのあちらさんのとらえ方次第だもの。

まあいいや。
とりあえず、スピリチュアルイベントにふさわしい派手めの服装で、顔も名前もバレていないのに変装ついでに念のため帽子なんかかぶったりして。


到着。進まないが仕方ない


さて、会場到着。こちら銀座にある「時事通信ホール」。
報道機関管理の施設で、爆笑問題の事務所もライブで利用している。
たいへん立地もよく、東銀座駅から徒歩1分。

すぐ近くには歌舞伎座、新橋演舞場などがある都心一等地。
一階にスターバックス(さっそく私の金で行けるな、おっさん!)
なんとトランプ大統領との夕食会で使われた「うかい亭」もここに。

すっげえ。
こんなところでスピったイベントなんてやれちゃうんだな……。
身の丈に… いや、失言はよそう。

次々とお客さんらしき人が会場へと吸い込まれていく。
ほとんど女性。年齢層はやや高めで、たぶん40代から50代ぐらいが多い。
いかにもスピ好きなデカい金キラアクセ付けた派手な人もいれば、普通のOLっぽい人もいて、もっと年齢高めな感じのご夫婦らしき人達も。
幼児や、中学生ぐらいの子連れもいたのには度肝抜かれた。

250席程度しかないので、すんなり入れるだろうと思って並んでいると、ホール入り口のチケットチェックの段取りが悪いせいか、なかなか進まない。
「当日券はこちらです」と声がかかって、半分ぐらいぞろぞろ移動。
予想通り当日券だいぶ余ってたんだな。

しばらく当日券の列を眺めていると、ステージごとに金額が違うことと、何種類かのチケットを買うと割引になるとかいう謎にお得なシステムのせいか、全く列が動かない。
買う段階で迷っているっぽいし、バイトらしきおばちゃん達もまごついている。

そしてなぜかネットでチケット買っているこっちも全然進まない。
おいおい、もう始まるぞ。オラ、間に合わんかったら一体どうしてくれr
まあ別にいいか……。こんなイベントの受付がしっかりしている訳がないのは予想通りだし、仕方がないこと。
なんの驚きもないよ。ただよく分からない感情だよ。

たいくつしのぎに周囲を観察すると、ホール入り口近くにはいくつかブースが出ている。
龍の置物の貴金属やお決まりの水晶やパワーストーン、心屋のCDやグッズを売っていたり、お笑いタレント楽しんごさんの整体コーナーがあった。

あ、楽しんご普通にブースにおる…。
背高いな。顔ちっさ。

でも列に並んでいる人は明らかな芸能人がいるのに全然気付かないのか見てないふりなのか、手を振りも声をかけもしていない。

ちょっとテンション高めのアレな人の集まりかと思っていたから意外だった。
あんなにもSNS上でパラディソを形成するようにはしゃいでいる心屋信者が集合したとは思えん。
それほどスピってない出演者には興味ないんか…。


不安よぎる開演


さて、入り口でスマホの画面を見せてチケットをもらって入場。
舞台上では既にオープニングが始まっている。
心屋氏とデューク氏らが楽しげにしゃべっている。

普段から毎日のようにネットで見ているせいか生・心屋氏には何の感慨も沸かない。それどころか、実在したことにがっかり。
バーチャルな人物ではなくて本当に生身の人があんな酷いことを言っていたんだ。

げげっ。こんな真ん中の席とは。
後ろの方を希望って言えばよかった。途中で抜けられんよ、これ。
魂は抜かれるかもしれんけど。

司会のお姉ちゃんの高い声が響くけど、会場がざわつく程にカミカミ。
そういえばあんたも先週くらいにやっと出演告知されてたもんな……。

なんだかドクタードルフィンさんがとにかく滑り倒してる。
確かこいつ胎内記憶の池川明医師とつるんで本出してたよな。

心屋他「……」

いや、お前らが引いてどうすんだよ。ドルフィンの話を広げてやれよ…。

舞台袖からぶっさいくな龍の着ぐるみが登場して、バルーンに出演者でサイン書く時間になったり、撮影タイム始まったりして「残り3秒でーす」とか言っている。
しゃあねえな。私だけ反応しないのは不自然だから撮ってやるよ。



ステージ上では再会を喜んだり、いじり合ったり。
イチャイチャわちゃわちゃが何分間か続いた。
これ「カオス」とか言ったら面白味のある感じだけど、正直ただ「雑」なだけだと思う。
準備不足の文化祭みたいでなんだか懐かしい。中学の同級生のみんな元気かな。

……いやいや、違うわ。金を払っとんねんこっちは。

ほとんど何をしゃべっているのか頭に入って来ないまま。
たまにやや控えめな「クスクス」という笑いが起きているという印象。
そうこうしているうちにステージ上に椅子が二つ用意され、デューク更家氏と心屋氏の2人による対談がスタート。

一応、会場の扉が閉まっていたので、やっと全員入場できたのかと観客席を見渡したところ、後ろのほうはスカスカだ。
250のうち、ざっと50~60席は空いている。

で、前の方は30席ぐらいのプレミアム席(?)
どう考えても心屋目当ての信者さん達。
なんかペンライトやウチワらしきグッズなど持っている人がいる。

「わ。すごいな…… 大丈夫かこれ」

不安がよぎる。味わったことのない緊張感。
分かってはいたけど、もしかしてマジに洗脳されちまわないか。
たぶんこの信者たちの好反応につられて会場が笑ったり泣いたりするのだろう。
ただ一人、たぶん私だけが冷めた目で見続ける決意でいる。

神様・仏様・山田ノジル様(潜入レポの神)どうかご加護を……



<後編に続く>
(注)言うまでもなく、この記事は全て主観と個人の感想です。



近日公開の連載中コラムも宜しくお願いします。
(今回と同じ潜入レポ込みの龍ネタの予定)

→ サイゾーウーマン「黒猫ドラネコの”教祖様”注意報」